「人の集まる空間」をつくりたい〜パラダイスファーム木更津・加藤正俊さん(木更津市)
木更津市のかずさアカデミアパークから車で5分弱。
案内看板に従って脇道に入り、森に囲まれた細道を下って上がっていくと「パラダイスファーム木更津」がある。
この農場は木更津市を本社として自動販売機のトータルオペレーションを事業とするヒラノ商事の農業部門として
2010年2月にスタートしたとのこと。
広さは28,000平方メートル。ラスペランザというイタリア料理店も経営しており、
ここで獲れた野菜は市場へはもちろん、ラズペランザでも使用されている。
農場長の加藤正俊さん。
出身は東京都町田市。幼少〜社会人になってしばらくは木更津とあまり関連のある生活ではなかったという。
「都立高校を最下位の成績でなんとか卒業しまして(笑)これではいけないと思い日商簿記1級や宅建を取るなどして
まず不動産コンサルティング会社に就職しました。
土地をお持ちの方に対して、土地有効活用の提案として多店舗展開(チェーン店)する企業への
賃貸の企画・立案・斡旋等をしていました。
その後、大手牛丼チェーン本部で牛丼店その他チェーン店の新規出店用の立地開発・店舗の設計施工管理に携わりました」
一見すると順調に社会人生活を送っているようにも見える。
農業へ、木更津へ飛び込むきっかけは何だったのだろう。
「外食企業の出店に関わる仕事を行っていましたが、食材の扱いや日本の農についての様々な矛盾に触れ、
正しい「食」の場面を突き詰めたくなったんです。
そこで、食の原点である「農業」(一次産業)を業としてやりたい気持ちが膨らみ、
様々な農村地域を見て回った結果、東京(消費地)に近い農業県である当地木更津の農業案件を見つけたんです。
豊かな自然に囲まれ古き文化が残る農村地帯がありましたし、大好きな海も近かったので決めました」
「外から見た木更津」ってどんな印象なのか、は気になるところである。そのあたりも聞いてみた。
「東京横浜からとても近い「田舎」ですよね。便利で生活必需品はなんでも揃う木更津を境に、
東・南に向かうと豊かな自然や風情あふれる農村地帯が広大にあることに感動しました。
良いことはとにかく自然に囲まれ、海の幸 山の幸に恵まれていること。東京ではあまり食べる機会が少なかった
山芋・菜花・タケノコ・フキノトウ・その他の野菜が安価で食べきれないほど入手できます。
また、おすそ分けでイノシシやシカなどたくさん貴重な食べ物がもらえることがあります。
サルなどの野生動物が見られることもありますし。
ただ、これは観光が盛んな南房総一体に感じていることではありますが、
シニア向けのまったりしたある意味地味なスポットが表立っていることが30代の自分には少し物足りない。
20代30代40代が楽しめるツアー、コース、アクティビティがあればもっと積極的に触れ合いたいです。
というより東京人の友人を連れまわしたいと思っています(笑)」
見渡す限りホウレンソウ。
今後はバジルソースやズッキーニなどの温野菜加熱調理パックなどの加工品開発、
ホウレンソウやトマトの契約栽培を提携企業と進めていく予定だという。
また、休日はサーフィンをしたり、古民家に都心に住む友人を招待して楽しみを共有したりしているという。
「君津にあった里山の古民家を購入して、業者に依頼せず自分でちょっとずつ改装しています。
「人の集まる空間」の場として豊かな自然が残るこの地域にスポットを当てたいと思っています。
農場経営はまだ軌道に乗ったとは言えない状況なので、まずはしっかりと生活ができるようにして、
憧れの田舎生活を満喫できるようにしたいです。
住宅地と農村地帯の間のこの地域で、魅力のある生き方を目指し、世代を超えて楽しめる空間を作っていくことが目標です」
六次産業化や農商工連携など生産に限らない農業の新しい形を外部から取り入れながら、
友人知人にはこの地区の良き文化を伝えていく。
こういったアクティブな人が増えてくれば、この街は将来有望だと思う今日この頃です。